日本からオランダへ 税金はどうなる?(パート2)
◎出国する人の税務手続き
出国前はもちろん出国後も日本で税務上の手続きが必要になることがあります。
◎出国した年の確定申告
居住者が年の途中で出国する場合、その年の1月1日から出国の時までの期間内に生じた所得について所得税の確定申告書を提出し、納税も済まさなければなりません。
出国後その年の12月31日までに確定申告が必要な所得が生じれば、翌年3月15日までにその所得について非居住者としての確定申告と納税が必要です。
ただし、出国するまでに「納税管理人」を選定したことを税務署に届け出ておけば、出国前後のそれぞれの期間内に生じた所得をまとめて翌年3月15日まで確定申告できます(所法127条)。
「納税管理人」は納税者本人に代わって日本における申告・納税をする代理人のことです。
日本の居住者・法人であれば、だれでも納税管理人になる資格があります。
家族・親戚、勤務先だった会社、知り合いの税理士などに納税管理人になってもらうのが一般的です。
税務署に届け出る「納税管理人の届出書」の書式は以下の国税庁ホームページから入手できます。
国税だけでなく地方税についても「納税管理人人」制度があります(届出は別個に必要です)が、自治体ごとに届出の書式が違いますので、現在お住まいの市町村(個人事業者の場合は市町村に加えて都道府県)から書式を入手して届出をする必要があります。
◎国外転出時課税
時価1億円以上の有価証券(株式、投資信託等)、匿名組合契約の出資持分、未決済の信用取引・デリバティブ取引を持ったままの居住者が非居住者になるときには、出国時点でこれらの資産をすべて時価で売却したものとみなして、その譲渡所得を出国時の確定申告で申告し、所得税を納税しなければなりません。
この「国外転出時課税」は、非居住者になると課税範囲が変わる所得税の仕組みを利用した租税回避の対策として2015年に導入された比較的新しい制度です。
もっとも、実際に売却する前の「含み益」に課税する仕組みになっているため、納税資金に困る人に配慮した納税猶予措置が設けられています。
納税猶予を受けるには、まずは「納税管理人」を選定し、国に担保を差し入れるなど一定の手続きが条件になっています。
◎その後も申告・手続きが必要になることも
非居住者になっても、日本国内で一定の所得が生じる場合は日本で所得税の申告が必要です。
例えば、非居住者になった後に日本国内にある不動産を賃貸・売却したことによって所得を得た場合、国内の事業所を通じて事業を行っている場合などは、それぞれの所得が生じた年ごとに所得税の確定申告と納税が必要です。
地方税については、非居住者になった翌年以降住民税は課税されませんが、固定資産税・都市計画税などのように国内に所有する資産に課税される税金や、事業税・事業所税などのように国内事業に課税される税金は、出国後も課税が続きます。
また、国外転出時課税について納税猶予を受けている間に対象となった有価証券等を実際に売却した場合は、売却の日から4か月以内に一定の明細書を提出して猶予を受けていた税額を利子税とともに納税する必要があります。この場合に、実際の売却価額が出国時の時価よりも下落していたときは、納税猶予を受けている税額の減額申請(更正の請求)をすることもできます。
なお、国外転出の時までに納税管理人の届出をしている方が、 国外転出時課税の申告期限までに対象資産を売却した場合には、その譲渡した対象資産について納税猶予の特例の適用を受けることはできませんが、その売却価額が国外転出の時の価額よりも下落しているときは、実際の売却価額で 国外転出の時に譲渡したものとみなして確定申告することができます。
◎ポイント
こうした非居住者になった後の税務手続を滞りなく進めるためにも、出国前に「納税管理人」を置いておいた方がよいでしょう。
「納税管理人」なしに出国する場合、出国する日までに所得税の確定申告(準確定申告)と納税を済ませる必要があります。
プロフィール:
税理士 山口剛史(やまぐち たかし)
クラウドを使って税務・会計サービスを提供
1996年の税理士試験合格後、外資系金融機関に企業内税理士として勤務。
2018年にフリーランスとして活動開始。
国内外で事業を行っている中小企業・個人事業者、
日本で税務申告が必要な外国人の方々を税務面からサポートしています。
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